果樹園





「ただいま〜」



ドアを開けて中に入ると、おかえりなさいとコロナちゃんがでむかえてくれた。
エプロンを付けてるってことはお昼ごはんをつくってたのかな?
そういえばいい匂いがするなあ。なんだかすっごくおいしそうな………



「あっ」

「あ」



さっきのとはくらべものにはならないほどおっきな音が、ぼくのおなかから鳴り響いた。
今の、ぜったいコロナちゃんに聞こえたよね……うえぇ、かっこわるぅい。



「え、えへへ……おなかペコペコ。ごはん、もうできてるかな?」

「もーちょっとです。座って待っててください」

「あ、うん」



しょうがないなあと言いたげにコロナちゃんは笑って、ぱたぱたと台所にもどっていった。
……師匠としての威厳、ゼロだよね……なさけないなぁ、ぼく。
そういえば、とぼくはきょろきょろとあたりを見回す。バドくんはどこだろう?



「ね、コロナちゃん。バドくんは?」

「バドなら書斎にこもりっきりです。それも朝からずーっと。
声、かけてみてもムダですよ。本読んでる時の集中力"だけ"は一人前なんだから」

「へえ〜……」



バドくんってば勉強熱心なんだねえ。ぼくとはおおちがいだよ。
なんとなくたいくつになってきて、ぼくは腰にくくりつけてある道具袋の中からさっきのゆびわを取り出した。
ほんとにどうしようかなあ、これ。ぼくには小さいし、女の子じゃないと……女の子――――
ぼくは思わず声をあげそうになった。女の子なら目の前にいるじゃないか!
そうだよ!すっかり忘れてたけど、コロナちゃんに何かプレゼントしようと思ってたんだ。
ようし、善はいそげだよね。ぼくは立ち上がって、さっそくコロナちゃんの背中に近づいた。



「コロナちゃんコロナちゃん!」

「すみません、あと少しですから座って待っててくれますか?」

「そうじゃなくてさ、手ぇだして!手!」

「はい?」



わけがわかんないという顔をするコロナちゃんをなだめながら、ぼくはそっとコロナちゃんの手をとった。
7歳だからまだ手はちっちゃい。けど、やってみないとわかんないよね。
ぼくは手の中に隠してたゆびわをとりだして、コロナちゃんのひとさしゆびに通してみた。



「よかった、ぴったり!……ん、ちょっとゆるいかな」

「ルークさん、これっ……」

「うん、今日会った獣人さんからもらったんだけど、コロナちゃんにあげるね」

「そんな、もらえません」

「いいんだよ、ぼくのゆびには入んないし。それにそのゆびわも、倉庫の中にしまわれてるより
女の子にもっててもらった方がしあわせだよ、きっと」



でも、とコロナちゃんはまだまだためらう。うーん、しょうがないなぁ。



「コロナちゃん。ぼくはコロナちゃんにもらってほしいんだ。
それに、ぼくはたちもう、家族なんだから。ね?」



みつめあって数秒後、コロナちゃんはまっかになってうつむいた。
どうしよう、このままだんまりしちゃうのかな。ごはん早く食べたいし、ぼく、困っちゃうなぁ。
だけどコロナちゃんはすぐに顔をあげて、にっこりと笑顔を見せてくれた!



「よかったあ。ありがとぉコロナちゃん」

「いえ、お礼を言うのは私で……ありがとうございます、大切にします」

「えへへー」



バドくんにはないしょだよ。笑ってコロナちゃんの頭をなでると、ぼくはテーブルに戻った。
よろこんでくれたみたいでほんとによかったよ。と、またおなかがぐぅと鳴った。
ぼく、よっぽどおなかがすいてるんだなあ。せいちょうきってやつかな?
ようし!コロナちゃんの笑顔もみれたことだし、お昼はたーっくさん食べちゃうぞ!
バドくんもたーっくさん食べるけど、まけないんだから。
それからちょっとして、コロナちゃんが3人分のお皿を運んできてくれた。ぼくんちに昔からある真っ白なお皿だ。
テーブルのまんなかにあるバスケットには山盛りのパン。お先にちょっとかじってればよかったな。



「ルークさん、バドを呼んでくるから、ちょっと待っててくださいね」

「はあい」



コロナちゃんがドアの向こうに消えると、ぼくはそっと台所に向かった。
もうおなかぺっこぺこなんだ。お昼ごはんのメニューが気になってしょうがないよ!
こっそりのぞきこむと、やっぱりいい匂いがした。あのおなべかな?………、そっか、スープだね!
やっぱりスープだよね、うんうん。せっかくだし、みんなの分ついじゃおうっと。
おなべのふたをぱかってすると、食欲をさそういーい匂いが、ふわっとぼくの鼻をくすぐった。
うふふ、ぼくの分、ちょっとだけ多めにしちゃおうっと。ふたりにはないしょ、ないしょ。
スープっておいしいよねぇ。材料しだいで変わるから飽きないし、ぼく、スープってだいすきなんだ!

3人分いっきに運んじゃうのは危ないよね。こぼしちゃったら大変だ。
おいしいスープは台無しだし、おそうじだって大変だもん。
それぞれ片手に、バドくんのぶんとコロナちゃんのぶんをしっかり持って運ぶ。
ゆっくり、ゆーっくりだよ。そーっとテーブルに置いて……よし、大丈夫!
無事運び終わったから、今度はぼくのぶんだね。



「あっ、ルークさん!座っててよかったのに……」

「何やってんだよ、コロナー」

「バドがなかなか来なかったからじゃん」

「フーンだ」



あーあ、バドくんってばベロだしちゃって。コロナちゃん怒っちゃうよ。
……あれ?これ、ひょっとして、ぼくのせいでケンカがはじまっちゃうよかん?
まずいなぁ、とめないと。ぼくが原因っていうのもやだよね。



「まあまあ、いいから早くごはん食べようよ!ぼく、もうおなかぺっこぺこだよぅ」



ふたりの頭をぽんぽんたたくと、ぼくはくるりと向きを変えて、ぼくのぶんのスープを運んだ。
もちろん、こぼれないようにゆーっくり。えへへへへ、野菜のスープ、おいしそうだなぁ。
うっとりしてる間に、コロナちゃんがあわてて色とりどりのジャムを運んできた。
サイコロイチゴ、タコオレンジ、すずぶどう、ドッグピーチ、サンタリンゴ、ビーダマンベリー……うふふ。
みんな座ったから、ぼくらは両手をあわせて、いただきますをした。
わーい、やっと食べれるよ!まずはスープをひとくち。……うん、おいしい!
コロナちゃんって、ほんとにお料理じょうずだよね。おかあさんに教えてもらったのかな?



「師匠!師匠の本、すげえタメになったよ!」

「わあっ、ほんと?」

「分厚いうえに濃いし、特にアレだね、世界辞典がすごかった!」

「あー、マナの女神さまとか、すごいよねぇ」



ぼく、世界辞典は天使さんのおはなしが好きなんだ。7人の天使さんが集まらなきゃなんだけど、
7人めが珠魅だったから、呼んでもきづいてもらえなかったーってやつ。
珠魅にとって、ほかのしゅぞくってやっぱり敵でしかないのかなぁ。さみしいな。
あ、じゅみといえば、るりるりと真珠姫ちゃんはどうしてるだろ?
なかまはみつかったかなぁ。真珠姫ちゃん、また迷子になってないといいんだけど…。
ぼんやりバドくんとコロナちゃんを見てると、少しおかしくなった。
しぐさがそっくりなんだよ!あはははは、スープにパンをつけて食べるタイミングまでおんなじだ!
かわいいなー。やっぱり双子だよねえ。



「師匠、何やってんの?」

「?ジャムをぬってるんだよー」

「…全部塗る気ですか?」



ふたりの視線をひとりじめしてるのは、ぼくが手にしてるスライスパン。
にんきものだね、とぼくは黄色と赤とピンクの3色にそめられたパンににっこりした。うふふ、おいしそー。
なんだか、ふたりがぶきみがってるから、説明しとこうか。



「ぼくねー、スライスしたパンにぜんぶのジャムを虹みたいにぬるのが好きなの」

「虹みたいに?」

「うんっ。こういうふーにきんとーにわけてぬるんだよ」



すずぶどうのジャムのビンをとって、まだあいてるスペースに紫色のジャムをぬりたくる。
次はビーダマンベリーがいいかなあ。



「ほんとの虹みたいできれいだし、ぜんぶの味を食べれるし、すっごくお気に入りなんだよ!えへへ」

「おいしいの?それ……」

「しつれいだなあ。ちゃんと別々にぬってるから、だいじょーぶだもん」



ぼくがほっぺをぷうっとふくらませると、ふたりは顔をみあわせた。そのタイミングはほぼ、おんなじ。
ちょっと笑っちゃったじゃん。やだなぁ、もぉ。
その十数分後、お昼ごはんのおかたづけをしてるふたりをしりめに、ぼくは槍を持って外に出た。
ちがうよ、ほんとは手伝おうと思ったんだ!
だけどコロナちゃんが、「バドに手伝わせるから、ルークさんは休んでてください」って。
おきゃくさんしてるのはヤなんだけどなぁ。ここ、ぼくの家なんだし。
とりあえず、ガイアが言ってた、お年よりの木をさがしてみよう。うーん…どこにいるのかな?
……あ、そういえばおぼえてる?ぼく、お庭をおそうじしなきゃと思ってたんだよ。
そこにおっきな木があった気がするんだ。このおうちをだっこしてる、この木ほどじゃないけどね。
よし、そうと決まればさっそくお庭にいこう!











***











昼メシの片づけは、結構早く終わった。3人分を2人で片づけたんだから、早く終わらない方がおかしいけどさ。
なのに今、俺の手の中にあるのは愛しの本じゃなく、洗濯物が山のように積もったカゴ。
昼メシの片づけのあとは、洗濯物干しを手伝わされてるわけだ。
嗚呼、今ごろなら本の世界にダイブしてたはずなのに……チクショウ!コロナのヤツ!



「ぶつぶつうるさいなぁ。居候させてもらってるんだから、これくらいは当たり前でしょ」



カゴから真っ白なシーツを引っ張りつつ、コロナが言った。
そんなん、わかってるってば。弟子入りを許してくれた師匠には、すっげー感謝してるしさ。



「ねえ、どうして弟子入りしようと思ったの?」

「なんでってそりゃ、強いからに決まってんじゃん!師匠はすげえよ、うん」

「あたしたちをあっという間にのしたから?子どもが大人に負けるのは当たり前じゃん」



うるさいなぁ、いちいち。よぉーし、師匠の素晴らしさを、この愚かな姉に説いてやろうじゃないか。
そう思ってカゴを地面に置いて顔を上げたけど、俺の反論はいっこうに始まらなかった。
コロナが洗濯物を干す手を止めて、何だか考え込んだ顔をしてたからだ。



「ねえ、バド」

「何だよ?」

「ルークさんって、何者だと思う?」



何を考え込んでいるかと思えば…なーんだ、そんなことか!



「そりゃー師匠はただ者じゃないよ!若い身空でこんなに広い土地持ってるし、
かといって、大金持ちってなわけでもない。でもみんなに優しい、ナイスな男だろ?」

「意味わかんないよ。……あの人、いくつだっけ?」

「んー…17、18歳くらいに見えるけど」

「それくらいの男の人が、フツーあんな喋り方や、振る舞いすると思う?」



うーむ、と胸の前で腕を組み、俺は唸った。
父さんに「そうしているとまるで大魔法使いみたいだな」と笑いながら言われたことを思い出す。
そうさ、俺はいつか大魔法使いになる男なんだ。

話がそれた。……初めて会ってから、今までの師匠の言動、行動を思い出してみた結果――――俺は首をかしげた。
確かに、師匠は何というか……



「ヘンだ」

「でしょ?ヘンっていうか、やけに子どもじみてるっていうか……」

「知恵遅れ、とか」

「まさか。この家、掃除が行き届いてるし、食べ物の管理もしっかりしてる。道具の手入れだってカンペキよ」

「誰か他の人と住んでる、とか」

「ルークさん、サボテンと2人暮らしだって言ってたじゃない」

「………」



言われて考えてみりゃ、確かにヘンだよな。
大の男が、チョウの動きを楽しそうで目で追いかけたり―――しかも、そのうち本当に追いかけかねない―――、
ジャムを絵の具みたいにパンに塗ったくったり、えへーだのうふーだの笑うとは思えない。
でも、師匠はアーティファクト使いだ。少しくらい変わっててもおかしかないさ!偉人には変人も多いしな!



「百害あって一利なし、な悪党よりかは、十利あって一害あるかないか、な変人の方がずっといいさ」

「まーたわけわかんないこと言って。……でもまぁ、アレだね」

「師匠はヘンだ」

「すっごくヘン」

「「だけど、悪い人じゃない」」



言い終えた瞬間、俺たちはそろってケラケラ笑い出した。
一緒に住み始めてまだ一週間も経ってないってのに、俺たちはすっかりこの家になじんだ。
まるで昔っから住んでたみたいに。緊張とか、遠慮とか、はなっからなかったもんな。

それはきっと、師匠のせいだ。

会って間もない俺たちを家族同然に扱ってくれて、それこそ、何でもないことのように。
ヘンだけど優しい師匠と、この家のあったかさ。これらがイイ感じにあわさって、俺たちを安心させてるんだ。



「あっ、いけない。早く洗濯物干さなきゃ。ほら、バドも手伝って!」

「え〜」

「2人でやれば、その分早く終わるでしょ。さっきもそうだったんだから」

「チェッ、わかったよ」



早く本の続きが読みたいなぁ。そもそも、俺には家事なんて向いてないんだ。
コロナって、そこんとこわかってないよなぁ。あー!わかったわかった!手伝うよ、手伝うってば!
手伝うからさ、耳なんか引っ張るなよ。イッテェなぁ。
俺はしぶしぶカゴを手に持った。こんなんじゃ嫁のもらい手もつかないよなぁ。
その時だった。世界を揺るがすような地震が起こったのは。











***











いきなり起きた地震にびっくりしちゃって、ぼくはどてんとしりもちをついてしまった。
お庭にいた草っぽいモンスターを倒したとたん、これだもの。
ぼくってどんくさいなぁ、んもう。お尻についたドロとか草とかをぱんぱん払う。
草ばっかりだから、ドロはあんまりついてなかった。よかったぁ。この服お気に入りなんだよね。
と、ぼくはヘンなことに気づいた。なんだかだれかに見られてる気がするんだ。
バドくんたちかなあ?でも、話しかけてこないのはおかしいよね。
あたりをきょろきょろ見回して、ふと上を見た時、ぼく、またびっくりしちゃった。
だ、だってね。このお庭にある、おっきな木。その木にヒトみたいな顔があったんだもん!
目も鼻も口もちゃんとある。耳…はさすがにないみたい。
木は何か言いかけて――――おっきなあくびをした。ながーいあくびを終えると、木はぼくを見てにっこりした。



「大地にマナを感じる。マナが満ちてくる。
お前か、私にマナの恵みをもたらしたのは。礼を言おう、若き住人よ」



ぼくはおへんじができなくて、ただただ、まばたきする。



「私の名はトレント。ずっと昔からここに生えている木だ。先ほどの地震は私が目覚めたからだろう」

「あ、ぼ、ぼくはルークっていうんだ。トレントさんは……ずっとねてたの?」

「はっはっは、呼び捨てでいいぞ。
ルーク、君は先ほどモンスターたちをやっつけてくれただろう?私はあの者たちに封じ込められていたのだよ」



そ、そっか。ぼくがちゃんとお手入れしなかったから……。
悪いことしちゃったなぁ。トレント、ごめんなさい。



「いや、なに。謝ることはない。庭の手入れとは、得てして面倒なものだよ」



それよりも、とトレントは嬉しそうににっこりした。



「私が眠る前と変わらず、根っこからマナが流れ込んでくる。喜ばしいことだ。
これならば、私はまた実をつけることができるだろう。ルーク、種を持ってはいないかな?」

「たね?あ、うん。ちょっとまっててね」



たしか、さっきのモンスターが落としてったのがあったと思うんだ。
ぼくはごそごそと道具袋をまさぐって見つけると、トレントに見せてあげた。



「ようし、いいぞ。私は種を食べると、それの組み合わせによって色々な実をつけることができるんだ」

「み?」

「それこそ、果実から野菜までね」



ぼくは、さっき食べた果物のジャムを思い浮かべて、それから一気に笑顔になった。
わざわざ自分で買いに行かなくてもいいってこと!?
しかもお野菜もできるなんて!



「すごいね!ごはんにこまらなくなるよ!」

「はっはっは、喜んでもらえて何よりだ」



豪快に笑うと、トレントはおっきくおっきくお口を開けた。ここに種をいれればいいのかな?
ぼくが迷ってるのをみたのか、トレントはお口を開けたまま、こくこくとうなずいた。
わかったよ。ぼくもうなずいて、手元のおっきな種とちっちゃな種をえいっとばかりにトレントのお口に投げた。
とたんにお口は閉じられて、ごっくん、といい音が鳴った。のどあるの?



「なかなか、いい種だ。数日たてば果実が実るだろう」



さすが今すぐは無理かぁ。まあいいや、今度また来ようっと!
トレントにバイバイして、ぼくはおうちに向かって走り出した。ふたりにも教えてあげなくちゃ!
もどってみると、お洗濯ものが干してあって、風にぱたぱたゆられていた。
ほんと、手際いいなぁ。ここにいないってことはおうちのなかかな?



「ルークさん!」



ドアの方をふりかえったとおんなじ時に、バドくんとコロナちゃんが飛び出してきた。



「さルっーきクのさんケガ、たはだのあ地り震ませじゃんいか?だろ?揺れ方がゼッテェおかしかった!」



2人同時にしゃべったものだから、ぼくはあんまりよく聞き取れなかった。
双子でも考えることがまったくおんなじ、ってわけじゃないんだね。
聞き取れたの、バドくんの「揺れ方がゼッテェおかしかった!」だけだったよ。
とりあえず落ち着いてもらって、さっきと同じことをしゃべってもらう。もちろん別々にだよ!



「ルークさん、ケガはありませんか?」

「うん、だいじょぶ」

「さっきの、ただの地震じゃないだろ?揺れ方がゼッテェおかしかった!」



さっきの…あっ、トレントのことだね。ようし、と意気込んで、ぼくは説明をはじめた。
話すうちに、不安そうだったバドくんとコロナちゃんの表情が明るくなっていくのがわかった。
話しおわると、バドくんは目をきらきらさせた。



「すっげえ!ルークの家にはそんな木まであるんだっ!」

「グッドですね!ツノガイニンジンが切れてるみたいなんです」



俺アレ嫌い、とバドくんがベロを出した。
またしかられちゃうぞ、と思ったけど、コロナちゃんはなんにも言わなかった。

そっか、コロナちゃんにも好き嫌いがあるのかもしれないね。

そういえば、野菜買い足すの忘れてたなぁ。明日買いにいこうかな?



「サイコロイチゴとかできたらいいなぁ。無農薬のはきっとウマイぞぉ」



もぉ、バドくんってば。ぼくが買ってる野菜や果物は、いっつも無農薬なんだよ?











***











それから何日か経って、ぼくはドアの前に立っていた。
これからトレントのところに行くところなんだ。そろそろ野菜とかできてるかなあって思ってさ。
ずーっとがまんしてたんだよ。ほんとはすぐにでも見に行きたくて、うずうずしてたんだ!
勢いよくドアを開けて、トレントのところにぼくは走った。
ちなみにバドくんとコロナちゃんは今、お部屋のそうじをしてくれてる。
いつも持ってるフライパンとほうきは、お母さんとお父さんの形見なんだって。なける話しだなぁ。

お庭に入ると、ぼくはびっくりして、ぱちぱちとまばたきした。
だって、いろいろな種類の野菜や果物が太い枝からぶらさがってるみたいに実ってるんだもん!
植物ってこんな感じに実るんだっけ…?



「やあ、ルーク」

「おいしそうだねえ」



ツノガイニンジンにアルマジロキャベツ、ハートミント……イカレモンまであるよ。
あんな手のひらサイズの種で、両手じゃないともてないサイズの野菜や果物ができるだなんて!
なんだかすごいや!ぼく、ちょっと感動しちゃったかも。
ちょっと高いとこにあるけど……届くかな?えいっとばかりにジャンプしてみると、思ったより簡単に届いた。
そのままぷちっとちぎるように取って、収穫成功!えへへ、嬉しいね。
けど、どこに入れればいいのかな。こんなに大きいと、2つ3つも持つのはちょっと無理だよね。
どうしようか迷ってると、トレントが箱があることを教えてくれた。
ここに入れちゃえばいいね!よいしょっと。



「これからも、種があるならいつでも果実を実らせてあげよう」

「うん!ありがとうトレント!」



箱にいれたのはいいけど、おうちに運ぶにはカゴがいるよね。
ぼく、今日のばんごはんは取れたての野菜を使ったサラダがいいなあ。
後でコロナちゃんにおねがいしようっと!









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